組織再設計のプロジェクトが失敗するとき、多くの場合、提言書の内容は正しい。問題は提言書の外にある。私たちが2018年から関与してきた案件の中で、「設計は正しかったが実装されなかった」ケースは全体の約3割に上ります。なぜ正しい設計が実装されないのか。その構造を解説します。

「誰が実装するか」が決まっていない

組織再設計の提言書には、新しい権限マトリクスや部門構造が描かれています。しかし「誰がそれを実装するか」が明記されていないことが多い。コンサルタントが去った後、社内に実装を主導できる人間がいない。結果として、提言書は「参考資料」として棚に並びます。私たちが案件を受ける際に最初に確認するのは、「実装オーナーは誰か」という一点です。

変化への抵抗を「感情の問題」と片付ける

現場の抵抗を「変化を嫌う人間の感情」として処理するコンサルタントがいます。これは間違いです。抵抗には必ず構造的な理由があります。新しい権限構造が自分の仕事を増やすと感じている、評価基準が変わることで不利になると予測している。これらは感情ではなく、合理的な判断です。その合理性を無視した設計は、実装されません。

「完成形」を先に決めすぎる

6ヶ月後の組織図を最初に描いて、そこに向かって進める方法は、環境が安定しているときにしか機能しません。現実の組織は、プロジェクトが進む間も動いています。人が辞め、新しい事業が始まり、市場が変わる。私たちは「完成形」より「次の3ヶ月で何を変えるか」を重視します。小さな変化を積み重ねることが、大きな再設計より確実に機能します。

経営陣と現場の「翻訳」をしない

経営陣が描く組織の姿と、現場が感じている実態の間には、常にギャップがあります。このギャップを翻訳せずに設計を進めると、経営陣には「正しい設計」に見えるが現場には「机上の空論」に見えるものができあがります。私たちは診断フェーズで必ず現場スタッフへのインタビューを行い、経営陣の言語と現場の言語を突き合わせます。

実装後のフォローを設計しない

組織は生き物です。新しい構造を導入した直後は、必ず摩擦が生じます。この摩擦を「失敗のサイン」と捉えて元に戻してしまう組織があります。摩擦は変化の証拠です。重要なのは、摩擦が生じたときに誰がどう対処するかを事前に設計しておくことです。私たちはすべての案件で、実装後3ヶ月間のフォローアップ体制を契約に含めています。

組織再設計は、設計の問題より実装の問題です。正しい設計を実装まで届けるためには、コンサルタントが現場に残る必要があります。それが私たちの基本的な立場です。